中国人学習者に日本語を教えるとき、「日本語って、どうして助詞がこんなに難しいんだろう?」と悩んだことはありませんか?
また、「文法を説明したはずなのに、なぜいまいち理解できないのだろう?」と感じた経験もあるのではないでしょうか。
しかし、中国語話者の背景を知らないまま指導を進めると、こうした問題が積み重なり、やがて学習者とのコミュニケーションにギャップが生じがちなのです。
では、どのようにすればこのギャップを埋められるのでしょうか?
じつは、言語背景や文化的な違いを理解することで、学習者がより効果的に日本語を学べるようになります。
そこで今回、中国人学習者の特性に焦点を当て、指導に役立つオススメのテキスト10冊を厳選してご紹介していきます。
これらの書籍は、初級から上級まで、幅広いレベルの学習者を教える日本語教師にとって役立つ内容ばかりです。
この記事は、以下のような方に特に参考になります。
•初めて中国人学習者を教える教師
•指導に行き詰まりを感じているベテラン教師
•より効果的な教材を探している教師
授業をより充実させるためのキーポイント
1. 言語背景の違いは大きい
「漢字の文化でしょ?そんなに違いがないんじゃない?」と思う方もいると思います。
たしかに、日本語と中国語は一見似た意味として捉えられるように感じますが、じつは、音韻体系や文法構造、語順には大きな違いがあります。
例えば、中国語には助詞が存在せず、語順が意味を決める重要な要素となります。この点を深く理解することは重要です。それによって、学習者の混乱の原因を把握し、適切な指導が可能になります。
このように、言語背景の違いに基づいた指導方法は大切です。
2. 学習者のモチベーションを高める
教師として経験が豊富なほど、固定観念にとらわれやすい傾向があることも、現実ではないでしょうか。
そうなると、学習者のモチベーションにもマイナスの影響を与えてしまいます。
それで、他の教師や専門家との意見交換、または最新の日本語テキストを通じて、自分の方法を客観視する姿勢が重要です。
近年、中国人学習者は、実用的な目的で日本語を学ぶケースが多くなっています。そのため、大学留学生活における日常会話やビジネスシーンに役立つ具体的な表現を学べる教材が効果的だと言われています。生徒の多様なニーズに対応できる工夫が必要、というわけです。
また、日本文化に触れることで学習者の意欲が高まることもあるため、文化的なトピックを取り入れると効果的でしょう。
3. 実践的で効果的な指導スキル
教師として、継続的にスキルを向上させることは、どうしても必要です。
それで、実際の授業で使えるアクティビティや練習方法を知ることが重要です。それには、ゲーム形式の練習問題や、グループ活動のアイデアなどが含みます。
近年、オンラインの個別レッスン(例えば、アメージングトーカー、フージャン(沪江网校)、italki)というスタイルの需要が高まっています。現場とは違う、オンライン授業に特化したスキルも必要です。
新たな指導スキルを加えることで、より創造的かつ効果的に授業を展開できるようになるでしょう。
中国人に日本語を教えるときのテキスト本おすすめ
「つなぐにほんご」シリーズ
「つなぐにほんご」は、机やテキストを使わない斬新な授業を提案する日本語教材です。「まず話してみて、そのあとで学ぶ」逆転のアプローチで、自然にコミュニケーション力を育みます。豊富なイラストで視覚的に学びやすく、言葉の使い方を直感的に習得可能です。文型を後から確認することで、日本語と語順が違う中国語話者が実践することへの抵抗感を軽減し、成功体験を通じてモチベーションを高めます。これは教師にとっても使いやすく、初心者からベテランまで幅広く活用できる魅力的な教材です。
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『みんなの日本語』シリーズ
構造/文法を基にした授業は、易しい文法から難しい文法へと学びを積み重ねる設計です。「〜は…です」の後に「〜は…ですか?」や「〜は…でした」を学ぶなど、体系的に知識を深められます。特徴として、学びやすさや教えやすさがある一方、非実用的な内容に偏る場合や使用場面が想像しにくい点もあります。中国語話者の想像力の豊かさに応じて、このテキストを使用するか考えましょう。
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『テーマで学ぶ基礎日本語』シリーズ
話題/トピック型授業は、「家族」「出身国」などの話題ごとに日本語表現を学ぶ方法です。「母は〜をしています」「わたしの国には〜があります」など、実生活に役立つ表現を習得できます。特徴として、学習者の関心に合う話題が選べ、モチベーションが高まりやすい一方、基礎学習には不向きで、教師が既習範囲を把握しづらい場合もあります。しかし、中国語話者は、自分の話をすることを好む傾向にあるので、使用する価値はありそうです。
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中上級学習者のためのブラッシュアップ日本語会話―みがけ!コミュニケーションスキル
機能型授業は、「謝る」「許可を求める」「依頼する」など、特定の目的や行動に応じた表現を学ぶ方法です。「〜てもいいですか?」「〜させていただけますか?」などを使い、実践的な日本語力を養えます。特に初中級以上の学習者に効果的で、実生活で役立つ表現を効率的に習得できるのが特徴です。近年、留学だけではなく、一般企業への就職を考えている生徒にとって役だつテキストと言えます。
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毎日使えて しっかり身につくはじめよう日本語
場面型授業は、「病院」や「旅行」など特定の場面ごとに使う日本語表現を学ぶ方法です。「〜がいたいです」「〜へいきたいです」など、実際の場面に即した表現を短期間で習得できます。オンラインで学ぶ生徒にとって需要が高い授業カリキュラムの一つです。生徒の明確なニーズに応えやすいので、おすすめです。
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わかる!話せる!日本語会話 基本文型88
技能型授業は、「読む」「書く」「話す」「聞く」といった言語の4つの技能に特化した授業形式です。例えば、「読む」に特化した授業では、読解のポイントや練習問題が中心となり、読解力を重点的に養うことができます。この形式のメリットは、特定の技能をピンポイントで強化したい場合や、個々の学習ニーズに合わせて柔軟に対応できる点にあります。また、技能型授業は、言語の4つの技能をそれぞれ深く掘り下げることで、学習者は自分の苦手分野を克服したり、特定の技能を伸ばしたりすることができます。
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できる日本語 初級
課題/タスク型授業は、単に文法や単語を学ぶだけでなく、具体的な状況設定の中で、実際に日本語を使って課題を解決することを目指す授業方法です。例えば、「知らない街で道を尋ねる」といったシチュエーションを設定し、どのように相手に声をかけ、情報を聞き出すか、迷った時にどうすればよいかなどを考え、実際に言葉を使ってコミュニケーションを取ります。
この授業形式の大きな特徴は、実践力を養える点にあります。教科書の中だけの日本語ではなく、実生活で使えるような日本語を学習できるため、学習者はより高いモチベーションで学習に取り組むことができます。また、総合的な力を養うことができる点も魅力です。聞く、話す、読む、書くといった様々な言語活動が統合され、より自然な日本語の運用能力が身につきます。
さらに、課題/タスク型授業は、学習者を主体的な学習者へと成長させます。教師が一方的に教えるのではなく、学習者自身が課題解決のために考え、行動するようになります。そのため、学習者は成長の過程を自分で実感できます。長期で学びたい中国語話者にとってオススメのテキストです。
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中級日本語文法を教えるためのアイデア集
「文法の授業ってつまらない…」そんな悩みを持つ先生方へ。この本は、中級レベルの日本語文法を、飽きずに楽しく学べるような157の活動アイデアが詰まった一冊です。
クイズ形式やロールプレイングなど、多様な活動を通して、学習者は自然と文法を身につけることができます。豊富な例文と具体的な活動手順が示されているので、すぐにでも授業に取り入れられます。また、活動のレベルや目的、学習者の興味に合わせて、様々なアレンジも可能です。
本書を活用することで、文法の授業が単なる知識の詰め込みではなく、学習者にとって有意義で楽しい時間へと変わるでしょう。
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[楽天ブックス]中級日本語文法を教えるためのアイデア集[本/雑誌] / 岡本智美/著 松浦みゆき/著 角田亮子/著
しごとの日本語 FOR BEGINNERS 会話編
この教材は、ビジネスシーンで必要となる基本的な日本語会話を、最小限の文法説明で効率的に学習できるよう設計されています。「どうも」「どうぞ」といった簡単な挨拶から始まり、ビジネスシーン特有の表現まで、幅広くカバーしています。
実践的な会話として、ビジネスシーンで実際に使える会話が厳選されています。また、多言語対応に対応しており、 中国語での説明も付いているため安心です。シンプルな説明により、文法の説明は最小限に抑え、直感的に理解できるよう工夫されています。この教材を活用すれば、短時間でビジネスシーンで通用する日本語のコミュニケーションスキルを習得することができます。
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まるごと 日本のことばと文化
このテキストは、日本語でコミュニケーションをとることを目標とした教科書です。多様な文化背景を持つ人々が日本語で交流する場面を題材にし、会話や写真、イラストなどを豊富に使い、異文化へ理解もできるようになります。
入門レベルでは、日常生活で使える基本的な表現を習得することを目指します。授業計画としては、聞く、話す、読む、書くの4技能をバランス良く学習できるようになっていて、特に、自然な会話を聞き、話す練習を重視しています。長期的なプランで学ぶ生徒にはオススメでしょう。
[楽天ブックス]【3980円以上送料無料】まるごと日本のことばと文化 入門A1りかい/国際交流基金/編著 来嶋洋美/執筆 柴原智代/執筆 八田直美/執筆
おわりに
今回は「中国人に日本語を教えるときのテキスト本おすすめ10選」ということで、それぞれの本の紹介と、「言語背景や文化的な違い」を理解することや、授業をより充実させるためのキーポイントを同時に解説しました。
このように、言語的なギャップを埋めるだけでなく、文化的な背景を理解することで、学習者との信頼関係も深まっていくことでしょう。
また、紹介した10冊の本それぞれに、「どんな生徒にオススメか」も記載してあるので、学習者にとって今必要な本を選んで、次の授業に活かしてみることもオススメしています。
では、今回の記事内容を参考にして、ぜひ授業の質の向上と、教師自身の成長を実感してください。
初心者からベテランまで、あらゆる教師の参考になれば幸いです。
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