歴史ファンタジーは、あり得ない設定と空想世界の物語でありつつ、過去の時代が舞台にしたり、歴史的事件や歴史人物と関わることで、現実味のある独自の世界観を味わえるのが魅力です。完全な大人向けの物以外に、歴史の知識も身につくメリットもあるので、児童文学にも多くの歴史ファンタジーが存在します。満足度が高い内容なので、大人もぜひ楽しんでみましょう。
Contents
1.空色勾玉(萩原規子)
日本のファンタジーを牽引してきた作家「萩原規子」のデビュー作にして一世を風靡した代表作です。古代の神々が暮らしていた日本が舞台になっていますが、そこは〝輝〟と〝闇〟が争う戦乱の世でした。主人公15歳の狭也は突如巫女という運命を背負うことになります。冒険あり恋愛ありの彼女の成長の物語です。中学生以上の児童文学ですが、東洋思想を基に展開される濃密なストーリーはファンタジー好きの大人も夢中にさせてくれます。「白鳥異伝」「薄紅天女」との三部作です。
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2.しゃばけ(畠中恵)
江戸時代を舞台にした人気シリーズ第一弾です。体が弱くて頼りない薬種問屋の若旦那一太郎ですが、彼のまわりには心強くて頼りになる妖怪たちがいました。ある夜、一太郎は殺人を目撃してしまいます。そしてその後に続く猟奇殺人事件に巻き込まれることになり、妖怪たちの手をかりて解決していくのです。キャラクターが個性的で楽しく、ファンタジーの世界観の中で時代物ミステリーの面白さも味わえます。どんな世代でも読みやすく、ラジオやテレビドラマ化もされている人気のシリーズです。
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3.おそろし(宮部みゆき)
ミステリーのベストセラー作家宮部みゆきは時代小説もたくさん書いていますが、中でもファンタジーとホラーの要素たっぷりの三島屋変調百物語シリーズは人気です。江戸の小間物屋三島屋にいろいろな人物たちが訪れ、そして奇妙な体験談を語っていきます。そこで語られる不思議な物語は、楽しいものから怖いもの、そしてちょっと切ないものまでバラエティ豊かです。連作短編なので読みやすいのも魅力です。長く続くシリーズですが、聞き役のおちか自身の複雑な事情や三島屋の家族のことも知って、より楽しみたい方は第一作の「おそろし」から読むのがおすすめです。
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4.陰陽師(夢枕獏)
平安時代の陰陽師安倍晴明を主人公にした人気作です。古典に残っている逸話も含め、平安の都に起こるさまざまな怪しい出来事を相棒の源博雅と共に、陰陽師の術を駆使して解決していきます。連作短編なので読みやすい上に、キャラクターの個性が秀逸で、淡々とした独特の文体に引き込まれる世界観です。岡野玲子の漫画も大ヒットし、安倍晴明という人物が一躍有名歴史人物になりました。映画化もされましたので、読んでから見ても見てから読んでも楽しめます。
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5.帝都物語(荒俣宏)
陰陽師ブームの火付け役になったとされる荒俣宏の伝説的な名作です。渋沢栄一や幸田露伴など実在の歴史人物も多く登場するのが特徴です。大怨霊平将門を呼び覚まし、日本を破滅させようとする魔人加藤と、それを阻止するべく活躍するさまざまな登場人物たちのストーリーにぐいぐい惹きこまれて読んでしまいます。陰陽道の術や風水の知識も興味深く読める小説です。こちらは明治末期から昭和まで続いている大作シリーズですので、時間をかけてゆっくりと近代日本の歴史に取り組んでいくのもおすすめです。
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6.烏に単衣は似合わない(阿部智里)
異世界ファンタジーでありつつ、平安時代をベースにした和風ファンタジーです。八咫烏の一族が支配する世界で、世継ぎである若宮の后選びが始まります。選び抜かれた候補の姫君はそれぞれ権力争いにしのぎを削る4つの大貴族の娘たちでした。しかしその后選びを妨害しようとするかのように失踪事件や謎の手紙事件など、不可解な事件が起こり始めるのです。果たして誰が選ばれるのか。夢中にさせられるストーリー展開に加え、意外なラストが待っていることでも有名なファンタジー小説です。
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7.戦国自衛隊(半村良)
1970年代の大ヒットSF伝奇小説です。演習中だった自衛隊の一団が、なんと戦国時代にタイムスリップしてしまいます。そこで出会ったのはあの上杉謙信でした。武器を持っていたことで合戦に巻き込まれていく自衛隊のメンバーたちでしたが、次第に自分たちがいるこの戦国時代が、自分たちが知っている歴史とは微妙にズレていることに気づくのです。映画化もされましたが、原作とは少し展開や雰囲気が違います。小説は中編で読みやすく、映画とはまた違った世界観を楽しめます。
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8.君の名残を(朝倉卓弥)
下校途中に火災に巻き込まれ、姿を消した高校生の武蔵と友恵、そして弟の史郎。彼ら3人が目覚めたのは平安時代末期でした。タイムスリップしてしまった彼らは源平の動乱に巻き込まれていくのですが、3人とも誰もが知っているこの時代の重要な歴史人物として生きていくことになるのです。なぜ、自分たちはこの時代に運ばれてしまったのか――。それを知ることにより、それぞれが大きな決断をすることになります。源平の時代をまた違った視点から眺められ、生死感や生き方について考えさせてくれる物語です。
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9.金春屋ゴメス(西條奈加)
歴史ファンタジーは、過去の時代が舞台になっているものが通常ですが、こちらのファンタジーは異色です。近未来の日本の中に都道府県のように「江戸国」ができ、その中で巻き起こる騒動を描いた物語になります。激しい競争率を突破し、無事江戸国への入国を果たした大学生辰二郎は、同期入国の仲間たちと共に、奉公先のボスであり超絶個性的な奉行「金春屋ゴメス」の命令で、致死率100％の疫病の謎を追うことになるのです。ゴメスをはじめ、魅力的なキャラクターたちといっしょに江戸体験している気分を楽しめます。
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10.月神の統べる森で(たつみや章)
歴史ファンタジーの中でもめずらしい縄文時代が舞台になっている物語です。作者いわく、古事記にも日本書紀にもほとんど出てこない月の神様にターゲットを当て、その秘密を探るように作られたストーリーになっています。若き村長アテルイと美貌の巫女シクイルケは旅の途中、翡翠の目を持つ少年ポイシュマと出会います。この運命的な出会いから、愛と葛藤に満ちた長い物語が始まるのです。児童書として知られていますが、大人こそ心に響く内容で、かつて自然と人が共に生きてきた時代のあるべき姿や大切なことを教えられます。
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11.猿丸幻視行(井沢元彦)
暗号ミステリーとしても有名な名作ですが、始まりはファンタジーのような設定です。主人公の大学院生が新薬の作用により、意識を過去に遡らせます。意識がたどり着いた先は、民俗学者折口信夫の若き日でした。彼の優れた推理により、百人一首でお馴染みの猿丸太夫の謎に迫っていきます。和歌に興味が無い人でも暗号を解読していく過程はじゅうぶんに面白く、いろは歌に関する考察も驚きます。ファンタジー感は薄いですが、明治と古代の空気感を感じながら想像力と上質な推理を楽しめます。
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12.時の旅人(アリソン・アトリー)
1939年に発表された児童文学で、イギリスの16世紀を体験できるSFファンタジーです。16世紀といえば、まだドレスを着用し、王位継続や宗教戦争などの事件が勃発していた中世の時代です。主人公のペネロピ―は病気療養のために、母の実家の古い農場にやってきます。しかし彼女は16世紀のある領主の屋敷へとタイムスリップしてしまうのです。そこは女王メアリーを助けようとする王位継承に関わる重要な人々が住む場所でした。農場と屋敷を行き来しながらペネロピ―の冒険が始まります。タイムスリップストーリーのさきがけと言われている名作です。
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13.魔界転生(山田風太郎)
実在した歴史人物や実際に起こった出来事を題材に、数々の伝奇小説を残している作家が山田風太郎です。たくさんの名作がありますが、柳生十兵衛を主人公に書かれた長編の本作は映画化もされ話題になりました。天草四郎や細川ガラシャ、宮本武蔵などが怪しい術によりあの世から蘇り、天下を揺るがす事件を起こしていきます。彼らの死に様を知るのは、歴史の知識にもつながり、荒唐無稽な内容ながら、スピーディーな展開と面白さで一気読み必至です。ただかなりエログロな部分もあるので、子供にはタブーかもしれません。
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14.彩雲国物語(雪乃紗衣)
架空の国の設定ですが、中国王朝の世界観をベースにした人気のライトノベルです。名門ながら貧乏な生活をしていたお嬢様「秀麗」は、高額の報酬に目がくらみ、王の教育係を引き受けます。そこから彼女の奮闘と、さまざまな登場人物との関わりによる恋愛物語もはじまっていくのです。少女向けのストーリーですが、中国の歴史感や雰囲気を味わうにはおすすめの作品だと思います。登場人物の名前や制度も実際の唐の時代をモチーフにしていたり、水滸伝や三国志などのエピソードも使われていたりするので、若い方々でも馴染みやすいです。
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15.鬼の橋(伊藤遊)
平安時代の歴史人物「小野篁」の少年時代をモデルにしたファンタジーです。妹を亡くしたショックから立ち直れない篁は、妹が落ちた古井戸から冥界へと迷い込んでしまいます。そこには恐ろしい鬼たちとともに、死んだはずの征夷大将軍坂上田村麻呂が、あの世への橋を渡れずに存在していました。実際に古井戸からあの世とこの世を行き来していたという不思議な逸話が残る小野篁のエピソードをベースにしています。物語展開は面白く、児童書ですが大人もじゅうぶんに楽しめる内容で、小野篁のことをもっと知りたくなります。
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16.源平の風(斎藤洋)
名作「ルドルフとイツパイアッテナ」の作者斎藤洋によって描かれた、キツネを主役にした歴史ファンタジーです。仙人の弟子として修業を積み、人間に化けられるようになった白狐魔丸が、歴史上の事件や歴史人物と遭遇し、さまざまな体験をしながら争いをし続ける人間を探求していきます。第一巻は源平合戦に巻き込まれ、頼朝に追われる義経の一行に同行します。二巻以降、戦国時代や江戸時代など時を旅していくので、いろいろな歴史的事件を白狐魔丸と体験することができ、知識も身に付きます。
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17.アイヌと神々の物語(萱野茂)
神話や昔話は、語り継がれたファンタジーの一種です。古事記やギリシャ神話などそれぞれの国に神話や伝説は多くありますが、こちらはあまり接する機会のないアイヌの昔話が集められている本になります。アイヌ語研究の第一人者の著者により、村のおばあさんたちから聞き集められたアイヌと神々のさまざまな物語が38編収録されています。物語を通して、当時のアイヌの風習や文化など知ることもでき、すべての物語にわかりやすい解説がついているので子供にも大人にも読みやすくなっています。
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18.雨月物語(佐藤さとる)
過去の時代が舞台であるのが歴史ファンタジーの特徴ですが、その時代に書かれたファンタジーにも注目してみましょう。「雨月物語」は江戸時代に上田秋成によって書かれたもので、多くの出版社からいろいろと出ていますが、こちらは「だれも知らない小さな国」の佐藤さとるによってわかりやすく書かれた少年少女向けの古典文庫になります。怨霊やこの世のものではない不思議な物語が集められているのが雨月物語で、江戸時代にヒットした怪奇ファンタジーといえます。児童向けですが、大人が古典に馴染むにはぴったりのわかりやすい本です。
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19.アラビアン・ナイト(ペルシャ説話)
千一夜物語ともいわれるアラビアン・ナイトですが、意外とちゃんと読んだことはないという方も実は少なくないでしょう。イスラム世界の説話集で、ペルシャの王に毎夜妻が語る物語という形式で書かれています。こちらの本では、シンドバッドの冒険や魔法のランプなど、よく知られた話を中心に抜粋されています。1704年初めてフランスで出版されて以来、さまざまな編集や結末で多くの本が出版されています。遥か昔のファンタジー物語を、まずはわかりやすく読みやすい児童書で大人も楽しんでみましょう。
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20.マイナス・ゼロ(広瀬正)
日本のタイムトラベル小説の最高峰ともいわれている名作です。1945年戦争中の東京、空襲の最中、浜田少年は息耐えようとする隣人「先生」からある言葉を言い残されます。それは「18年後の今日、ここに来てほしい」という奇妙なものでした。そして約束の日、浜田少年がそこで見つけたのは、行方不明になっていた女性と先生が開発していたタイムマシンでした。昭和40年に書かれたSFで、高評価でありながら長らく絶版になっていた作品です。昭和レトロとSFの世界観を体験してみてください。
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